ALLDAY Column

“GYMRATS”とは思想なのか。



“ALT. H.(Alternate History)”日本のバスケットボールに歴史があるように、日本のストリートボールにも数々の歴史や伝説が存在する。まだ誰も知らない路地裏の物語を少しずつ日当たりのいいところで紹介していくのが、この“ALT. H.”。今回紹介するのは、それぞれが独立して点在する日本のバスケットボール・シーンの全てを飲み込む勢いで増殖を続ける集団、“GYMRATS”。(このコラムは2005年9月に書かれたものです / ALLDAY MAGAZINE VOL1掲載)


 協会とプロリーグが背を向け合うことが正式に発表され、またストリートは鼻摘みにされている日本のバスケットボールの混沌とした現状の中、その全てのシーンにリンクを張る新風が、実は存在する。それが今回紹介する“GYMRATS”という集団である。

 その発起人として集団の中心にいる人物は4人。“Whooz.T(岡田卓也)”、“Coast 2 Coast(池田二郎)”、“LIL WIZ(AJ)”、“J-WALK(仲西淳)”。それぞれが自身の夢を追い求め、辿り着いた米国で偶然巡り会ったのが2001年。日本のバスケットボール・シーンを自分たちで作り上げていきたい、夢を与えたい、そう思って立ち上げたのがこの“GYMRATS”であった。

 元々、岡田卓也が大学を卒業後、NBA入りを目指し単身渡米を果たした先で出会ったポール・ウェストヘッド氏(現在NBAオーランド・マジックのアシスタント・コーチ)に、その熱心な練習への姿勢に感心され名付けられたのが“GYMRAT”。体育館(GYM)に住みつくネズミ(RAT)のように年がら年中バスケットボールの練習に精を出している連中という意味のスラングで、クルーの命名はそこに起因している。

 月日が流れ、当時まだ無名のまま志ひとつで米国で奮闘していた4人は、いつしかそれぞれのステージで台頭することとなった。岡田卓也は国内外で様々な実績を残し、今夏ABA“イングルウッド・コブラズ”でプレイ。アメリカプロリーグでのプレイに今最も近い男として期待を集めている。池田二郎は2004年、現役生活にピリオドを打ったものの、“フープトレーナー”として後続選手のパーソナル・トレーニングを進めると同時に、ヒップホップとバスケットボールそれぞれのシーン促進のため“Coast2Coast Sports & Entertai nment”を設立。AJは日本のストリートボール・シーンのパイオニアとして“FAR EAST GYMRATBALLERS”を立ち上げ、リーダーとしてそのカリスマ性を生かし精力的に活動している。仲西淳は米国の大学でプレイした後、BJL“東京アパッチ”より1巡目指名され、今冬より開幕するBJLにプロ・バスケットボール選手としてプレイすることとなった。

 それぞれの夢が形になり始めた頃、その活動をサポート、そしてその想いに賛同する者たちが急増し始めた。彼らはその支援者たちを“GYMRATS FAMILY”と呼び、中にはJBLでプレイする者、BJL入りが決まった者、米国でのプレイを目指す若者、草の根のストリートでプレイする者と様々であったが、その住み分けを隔てることなく全てを迎え入れた。

 バスケットボールが好きで好きでしょうがないGYMRATは日に日に増殖中で、お互いの経験や目標をポジティブに受け入れ、そしてまだバスケットボールの楽しみ方を知らない日本のボーラーたちにクリニックやコーチング、イベントを通じてそれぞれの楽しみ方を発見出来るような活動を行っている。

 序文に書いたように、日本のバスケットボール・シーンはそれぞれがそっぽを向き、由々しき方向に向かっているかもしれない。ただ、ここにきて思うのは「その全てをつなげることを出来るのが純粋にバスケットボールに熱中する“GYMRAT”という思想である」ということなのだ。

GYMRATS WEBSITE : http://www.gymrats-japan.com/


(text : MUMSISTA / このコラムは2005年9月に書かれたものです)

#by katoyo - | 2006-04-04 15:24:00| ALT.H.|


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